風の強い日

陽だまりの中で黙りこくる
眩しい世界に 麻痺する皮膚
はしゃぐ太陽の視線に追われて
気づけばいつも 日陰を探す。
機械仕掛けのコンクリの森
針金の木になる、金属のドングリ。
砂鉄の埃で霞む目玉は
さながら ガラスの鈍い輝き
アスファルトの上にへたり込んで
昨日と明日の曖昧な境を 薬指でそっと塗りつぶす。
繰り返しはもうたくさんなのに
示し合わせたリピート再生
風と金属が擦れる音
耳を澄ましても解読不可能。
行き先は不明 錆びた標識
どのみちどこかに繋がっているなら
右も左も同じなのであろう。
ひたすら続く 見慣れた景色
退屈に抱かれて 嬉し涙が頬を伝う。
きっと離れられないのだろうな このまま
嫉妬深い両手を携えて
手を伸ばしても掴めないばかりか
指を根こそぎ持ってった。
取り戻すための深呼吸。
味のしない空気が口の中に充満する。
受け入れるんだ全てをと
奏でた唇が上滑り。
虚空を切り裂く独り言に
下手な口笛のガイドメロディー。
ふと空を見上げてみれば、
あれだけ眩しかった陽が 月を追いかけている。
少し風が強いけど、今日はなんていい天気だろう。